学生諸君に向けて、新しい進路へのヒントないしアドバイスを書けという
編集部からの依頼であるが、じつはとりたてて何もないのである。
しばらく生きてみればわかるが、個々人の人生はそれぞれ特殊であり、
他人のヒントやアドバイスは何も役に立たない。
とくにこういうところに書きつらねている人生の諸先輩の「きれいごと」は、
おみくじほどの役にも立たない。
振り返ってみるに、小学校の卒業以来、厭というほど「はなむけの言葉」を
聞いてきたが、全て忘れてしまった。
いましみじみ思うのは、そのすべてが自分にとって何の価値もなかったということ。
なぜか? 言葉を発する者が無難で定型的な言葉を羅列しているだけだからである。
そういう言葉は聞く者の身体に突き刺さってこない。
だとすると、せめていくぶんでも本当のことを書かねばならないわけであるが、
私は人生の先輩としてのアドバイスは何も持ち合わせておらず、
ただ私のようになってもらいたくないだけであるから、こんなことはみんな
よくわかっているので、あえて言うまでもない。
これで終りにしてもいいのだけれど、すべての若い人々に一つだけ
(アドバイスではなくて)心からの「お願い」。
どんな愚かな人生でも、乏しい人生でも、醜い人生でもいい。死なないでもらいたい。
生きてもらいたい。
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