「うつ百万人」陰に新薬?販売高と患者数比例
2010年1月6日3時3分配信 読売新聞
うつ病患者が100万人を超え、この10年間で2・4倍に急増している。
不況などの影響はもちろんだが、新規抗うつ薬の登場との関係を指摘する声も強い。
安易な診断や処方を見直す動きも出つつある。
東京の大手事務機器メーカーでは、約1万2000人いる従業員中、
心の病による年間の休職者が70人(0・6%)を超える。
2か月以上の長期休職者も30人を超えた。多くがうつ病との診断で、
10年前までは年間数人だったのが、2000年を境に急増した。
この会社の産業医は、「『うつ病は無理に励まさず、休ませるのが良い』との啓発キャンペーンの影響が大きい」と話す。
うつ病への対処としては正しいが、
「以前なら上司や同僚が励まして復職させたタイプにも、何も言えなくなった。
性格的な問題で適応できない場合でも、うつ病と診断されてしまう」と、嘆く。
国の調査では、うつ病など気分障害の患者は、2000年代に入り急激に増えており、
一概に不況だけの影響とは言えそうにない。
患者急増との関係が指摘されているのが、新規抗うつ薬「SSRI」だ。
年間販売高が170億円台だった抗うつ薬市場は、1999年にSSRIが登場してから急伸。
2007年には900億円を超えた。
パナソニック健康保険組合予防医療部の冨高辰一郎部長(精神科医)によると、
欧米でも、この薬が発売された80年代後半から90年代初めにかけ、患者の増加がみられた。
冨高部長は「SSRIが発売されたのに伴い、
製薬企業による医師向けの講演会やインターネット、テレビCMなどのうつ病啓発キャンペーンが盛んになった。
精神科受診の抵抗感が減った一方、
一時的な気分の落ち込みまで、『病気ではないか』と思う人が増えた」と話す。
田島治・杏林大教授が、学生にテレビCMを見せた研究では、
見なかった学生の倍の6割が「気分の落ち込みが続いたら積極的な治療が必要」と答え、
CMの影響をうかがわせた。(つづく)
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